失われゆく藻場の再生事業

磯焼けという言葉を耳にされたことがあると思います。「海のゆりかご」と呼ばれ、
まさに水産生物の宝庫である藻場は、それ自体が二酸化炭素を吸収する大植物群落であり、
人間にとっては食料や医薬品の原料ともなります。その藻場は人間の経済活動による破壊と、
最近では海水温の上昇による南方系草食魚類の北上による食害などで年々その繁茂域が
縮小しています。そのような現象が「磯焼け」と呼ばれています。

地球規模の環境変化など私たち個人では如何せんともしがたいことです。

しかし、「できないからしない」では済まされないと考えています。

海藻の着床基盤を設置するだけでなく、草食生物から母藻を守るための保護枠を
設け、胞子を確実に供給する核藻場という手法で藻場の回復に取り組んでいます。

核藻場礁の母藻から放出する胞子により、周辺に新たに芽生える海藻が増えるように
根気よく続けて行きたいと考えています。


ハニカム式藻場礁

面構造が豊富なハニカムユニットの天井に着定基質となる機能部材を取り付けます。
機能部材は、3種類ご用意しています。対象生物や海域条件に応じて柔軟に対応できます。
自然石や階段状の屋根はアワビ・サザエが生息し、礁内部は魚類幼稚仔の育成場となります。

SDR型
m1 
 
藻場造成の定番である自然石を
充填したユニットを取り付けます。
自然石内は潮通しがよく
藻類の育成を促進します。
 

SBR型
m2
自然石をコンクリートに埋め込んだ
部材を取り付けます。
条件の厳しい波浪海域でも
石材が移動しないため、
藻場造成の定番である
自然石を利用できます。

STR型
m3
コンクリート製の傾斜状階段構造を
取り付けます。
海藻類の着生面積を広く確保し、
砂泥の堆積を防止します。
対象生物に応じて、STR裏面に
溝も付加できます。


核藻場礁

 
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セル-MPS(Marine Plant Shelter)
k2
磯焼けは一般的に植食動物(ウニや植食性魚類など)による食害が最も大きな要因とされています。
これら植食動物から藻場を防御するため網などで囲み藻場を保護・回復する手法があります。
当社の核藻場は、波浪に強い剛素材フェンスで草食動物からの食害を防ぎ、礁内部に健康な母藻を繁茂させます。
母藻からは毎年胞子が放出され、周辺域に新たな藻場が形成されます。剛素材フェンスは付着物で汚れても水中で清掃・交換ができるので、海藻の生育に必要な光を確保する事ができます。

漁業者による海藻プレートの製作と中間育成

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核藻場の礁内には海藻プレートを設置しています。
そのプレートに海藻の種糸を巻きつける作業、海中設置できるサイズまでの中間育成は漁業者の方にご協力頂いてます。
地元の漁業者の方々と共同で、藻場の回復に努めています。

調査写真

SDR型
mo1
sd1
 
sd2
着生海藻(ホンダワラ類)
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フシイトモクが繁茂
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天端部全面にフシイトモクが密生
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礁内部にメバル稚魚
sd6
石詰裏面にヤリイカの卵塊


STR型
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st1
階段屋根への付着器の固着状況
st2
礁内部のメバル幼魚の蝟集状況


核藻場礁セル-MPS
mo3
mp1
フェンスの中で成長した海藻
 
mp2
フェンスが汚れても水中で
清掃・交換可
mp3
試験礁内部クロメ繁茂状況
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試験礁内部クロメ繁茂状況
mp5
食害防止フェンスにクロメ幼体
mp6
試験礁周辺(1m以内のクロメ幼体)
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食害フェンス取り外し状況
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食害フェンス上面の清掃後